皆さん、ゲンガノミカタ展は見ていただけたでしょうか?8月31日(火)の最終日まで残り数日となりました。まだの方は折角の機会ですので、ぜひご観覧ください。
今回注目するのは「スクリーントーン」という画材の使い方についてです。「スクリーントーン」とは細密な点や線をあらかじめ印刷した糊付きフィルムのことです。
点や線を等間隔に置くと目の錯覚でグレーを表現でき、間隔や大きさを変えれば濃淡の調整もできます。
点描やカケアミなどの手描きで表現していたところも、スクリーントーンを使うことで作業効率が高まりました。空、海、衣服、影、木の葉や心情表現を表すものまで多様な場面で使われています。
衣服、背景、顔の影、驚きの心情この2枚の画像でこれだけの種類のトーンが使われています。左・『月下の棋士』(作:能條純一) 右・『食キング』(作:土山しげる)
さらに、漫画家たちはただ貼るだけでなく、トーンに重ね貼りや削り出しなど創意工夫して表現の幅を広げてきました。
今回はそんなスクリーントーンの使い方に注目していきたいと思います。
こちらがスクリーントーンです。点や線が均等に印刷されたものや点の大きさや密度を徐々に変えてグラデーションを施したもの、花柄や幾何学模様など種類は数多くあります。これらを貼り付けて原稿を彩っていきます。
まずはこちら、能條純一先生の『月をさすゆび』から
背景はトーンの印刷面を削り出してリアルな立体感を表現している一方、キャラクターの衣服は同様の作業が施されていないことで、画面にメリハリが出ているように見えます。
また、空にトーンを貼るときは削り出しを用いて雲を表現しています。下は東村アキコ先生の『ひまわりっ~健一レジェンド~』。
続いて、土山しげる先生の『極道めし』より、
卵に異なるトーンを重ねたうえで削り出すなどして、立体感を出しているように見えます。
いかがでしたか?漫画原稿を早く、効率的に仕上げるために様々な技術や道具が開発されましたが、その分工夫を凝らしてそれらを使いこなし漫画家たちは表現の幅を広げてきました。スクリーントーンの細やかな加工には漫画家たちのそんな情熱が表れています。